過去の活動

教養講座 関西フィルハーモニー管弦楽団の練習を見学し、首席指揮者藤岡幸夫氏の講話を開催しました

開催日:2009年6月10日

場所:オーク2番街

講話内容

◆指揮者の仕事とは
 私はオーケストラのメンバーと一緒に音楽をつくっていくことをとても大切にしている。押しつけて、嫌々演奏をさせるのは良くない。指揮者が焼いた青写真を、まるで楽団のメンバーが自分たちでやりたいことだと思っている時の演奏が最も良い。メンバーのやる気を出し、彼らの持っているポテンシャルを120%引き出して、気持ち良く演奏できるようにする。これが指揮者の一番いい仕事である。
 また、指揮者はオーケストラのメンバーの前で絶対に迷ったら駄目だ。基本的に指揮者が迷うと誰もついて来なくなる。私はBBCフィルというヨーロッパのオーケストラでデビューした。初めてのリハーサルの時に、私の注文に対して、ビオラ奏者は「カラヤンとこの曲を何度もやっているが、そんなことを言われたことがない」と言い、私は「そうですか」と引き下がってしまった。すると、休憩時間に私のデビューを後押ししてくれる人から、「お前は誰だ。カラヤンじゃない、サチオ・フジオカだろう。カラヤンがやらなかったからといって引き下がるな。お前の仕事はあきらめちゃ駄目だ」と怒られた。初めての洗礼を受け、すごくいい経験をした。指揮台に立ったら絶対にあきらめない、それが指揮者の仕事だ。

◆指揮者は孤独
 師匠の渡邊暁雄先生は日本を代表する名指揮者で、私は最後の内弟子として音楽だけでなく色々なことをご指導頂いた。弟子となった最初に、「指揮者は悪口を言われるのが仕事だ。でも、君は絶対に悪口を言ったらいけない、悪口を言われる側の人間になりなさい。悪口を言ってしまったら、君の音楽を汚してしまう」と教えて頂いた。私はその教えを今でもとても大切にしている。また、私はどんなに忙しくても、辛くても、愚痴らずに一言、「それが男を磨くんだ」と呟いている。
 指揮者というのは孤独である。またそうでなければならない。特定の人と仲良くすると楽団はうまくいかなくなる。プレーヤーと距離を置かなければならない。

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