過去の活動

教養講座 関西フィルハーモニー管弦楽団の練習を見学し、首席指揮者藤岡幸夫氏の講話を開催しました

開催日:2010年8月09日

場所:オーク2番街

講話内容

■指揮者としての心がけ
 一般的には指揮者は一段高いところから偉そうにしているイメージを持たれているが、こと関西フィルハーモニーに関しては全くそういうことはなく、私はオーケストラのメンバーと対等の立場で一緒に音楽をつくっていくことをとても大切にしている。
 また、指揮者は演奏者の前で絶対に迷ってはいけない。BBCフィルでの初めてのリハーサル時に、私の注文に対してある演奏者に、「カラヤンを含め、今まで何度も演奏している曲目だが、それらの解釈と違うので従えない」と言われ、私は引き下がってしまった。すると、休憩時間に演奏者の一人が言った。「お前はカラヤンではなく、サチオ・フジオカだろう。指揮者は自分の主張を諦めてはいけない。」そう、指揮台に立ったら絶対にあきらめない、それが指揮者の仕事なのだ、と改めて認識した。
 ただし、知ったかぶりはすぐに見破られ、演奏者の信頼を損なうため、普段の勉強と経験に基づいた説得力のある指揮注文をおこなうよう心がけている。

■I am professional
 イングリット・ヘブラーという有名なピアニストと共演する機会があった。最終公演会場のピアノがボロボロで、公演の演奏に足るものでなかった。ところが彼女はリハーサルの短い時間、たった一人でそのピアノと向き合い、本番ではすばらしい音で演奏したのだ。カーテンコールで、「魔法でもかけたのか?」と言ったら、彼女は「Of course, I am professional.」と答えた。そのとき、プロフェッショナルとはこれかと、強く感動したことを覚えている。何か困難や問題があっても、文句を言わず、人やモノに責任転嫁しない。そして、謙虚さ。プロフェッショナルとはこのような要素を併せ持つ存在と思う。

■メンバーへの愛情
 師匠の渡邉暁雄先生が亡くなる前の最後のレクチャーが大変印象深かった。「指揮者は、いろんなことを言われる。だが、君は絶対人の悪口を言うな、悪口を言われる側の人間になりなさい。悪口を言ってしまったら、君の音楽を汚してしまう。」その教えを今でも思いだし、相手から別に愛されてなくてもいいから、誠実に、そのオーケストラのプレイヤーに対して常に愛情を持って接するようにしている。

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