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第6回人間力養成講座を7月24日に開催いたしました

開催日:2002年7月24日

テーマ:「企業の社会的責任に関するもの」

講師:川上 哲郎 住友電気工業 相談役

川上哲郎講師講話

○リーダーとしての条件
 最近、終戦後の経済を支えてきた津田久、亀井正夫先輩が相次いで亡くなられた。お二人に共通する資質は、①バックボーンがしっかりしている(古典に明るい)、②経営判断の軸がぶれない、③職業を通じて社会に貢献するという使命感を持っていたことである。
リーダーシップを発揮する裏付けは、人事と資金である。つまり、人材を発掘し、適材適所に配することと、資金(予算)を最適配分することにある。

○日本型経営の行方
 戦後、マッカーサーの公職追放により企業経営者が若返り、アメリカ型経営を志向した。1ドル360円という円安の固定為替レートのメリットを活かせたこと、株式の持合いで株主から成績を問われないという意味では、経営者にとっては楽な時代だった。

 日本型経営は80年代までは成功した。キャッチアップ経済の下では日本型労使関係と情報技術によって製造業では世界のリーダーシップを一旦とったのである。しかし、90年代に入って経済が激変したのに、戦略的に有効な手を打たず、マイケル・ポーターの言を借りると経済政策は失敗の連続であった。舞台が変わっているのに、これまで通りのバラ撒き・公平・悪平等のマクロ政策が続いた。

 日本企業も改善・改良の局所戦術にこだわり、国際的な比較優位の観点からの意思決定を怠り、戦略問題を先送りした。ちょうどウォール街のバブルの時期にあたり、日本と同様に経営者のモラルが失われていった時期でもある。但し、アメリカではアスペン研究所のように、経営者のためにギリシャの古典をはじめとして徹底的に倫理を学ぶ場がある。

 企業の社会的責任とは、経営者が基本的なモラルを持って会社を経営する一方において、新しい社会への感性・感覚を養うことが大事である。長期的に堅実な経営をし、雇用を保つことで社会が安定する。メセナやフィランソロフィーに一時的に資金を出すことだけで社会的責任を果たせるものではない。

 日本型経営をもう一度よく考えてほしい。日本社会にはどういう特質があって、どういう強みがあるか。会社経営でも同じであり、比較優位の点を多く持っている会社が強い。それにしても日本は社会的コストが外国と比べて高すぎる。日本社会に巣をつくっている反社会的な既得権益を崩していかなければ、日本の再生は難しい。経済人の社会的責任の一端であろう。

以 上

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