過去の活動

談論風発講座「行財政改革グループ」第1回講義を開催しました

開催日:2005年9月07日

場所:関西経済同友会会議室(中之島センタービル28階)

テーマ:「新たな地方政治改革の動き」

講師:山田廣則 大阪ガス株式会社 顧問

講話内容

◆自治の基本は「自分のことは自分でやる」
 地方自治の根本精神はサブシディアリティ(補完性の原理)、つまり、自分のことは自分でやる、できないことのみ地域社会あるいは官に持っていく、という考え方である。日本でも戦前はそういう精神で自治が行われていたが、戦後に多くの仕事を官が民から奪い取った結果、効率の悪い進み方になってしまった。
 もともと自分のことは自分でしていくというのが原点で、それを復活させようという世論が今やっと出てきた。今はそういう時代の大きな変わり目にある。

◆新しい地方自治の潮流
 一つの流れは新しいタイプの知事たちの登場である。これまでは「地盤」、「看板」、「かばん」がないと当選できなかったのが、自分の意見を言って当選する知事が出てきた。今まで考えられなかった時代がうねりとして出てきている。
 もう一つの流れは、地方自治体の基本条例を作ろうという動きである。国が自治体に関与しなくなると、自分たちで何とかしないといけない。しかも、お金もない。その中で地方自治をどうするかということが出てきた。きちんと地方自治が行われるために、市民参加をどうするかということを後退することなしに決めていこうというのが基本条例の大きな役割である。

◆ローカルマニフェスト
 マニフェストというのは具体的で、予算がきちんと決まっていて、フォローできるというのが条件である。もし、それを守れなかったら選挙民に対してどんな理由で守れなかったかということを報告して、次の選挙に影響するというものがマニフェストである。だから、マニフェストは日本語では政権公約と言う。政権を取るための約束である。そういうのがマニフェストであって、私は、小沢さんが作った小選挙区制が仏だとしたらマニフェストは魂だと思う。これらが両方あってマニフェストが生きてくる。
 松沢さんがマニフェストを掲げて選挙して神奈川県の知事になった。ところが、議会も役人も知事の言うとおりには動ない。役所には十年計画や五年計画があって、それをどう変えさせるか、ということに大変なエネルギーを使っている。
 補助金の問題もある。首長がこうしなさいと決めても、職員からは「国がうんといわない」といった返事が返ってくる。つまり、交通局の職員の現実の上司は国土交通省の役人である。そうすると首長は何のためにいるのか。そこのところで非常に難しい役割をしているのが今までの首長だったが、これはだんだん変わってくると思う。地方分権一括法で変わってきているし、また変わらないといけない。しかし、今のところは金と口というのは表裏一体の話であるから、変わりきってはいない。

◆自治基本条例
 自治基本条例の本旨は自治体の骨格を作るということである。きちんと地方自治が行われるようにするために、市民参加をどうするかということを後退することなしに決めていこうというのが自治基本条例の大きな役割である。だから、その役割というのは情報の公開であるとか、行政の義務はどういうものであるとか、あるいは行政に参加する手続きであるとか、どういう時に住民投票にかけるのかというようなことになる。名市長がやめた後も後戻りしないことが一番大事だと思う。
 いろんな条例があるが、自治基本条例というのはその市、町なりの最高規範であるという位置づけでやっている。私は豊中市の基本条例案の作成に市民委員として参加している。今、豊中市の一つの課題になっているは、市民投票をどうするかということである。具体的には、常設型の条例にするのかしないのかということである。常設型となると全国に先駆けてということになるが、そこまで踏み切れるかどうかがこれからの問題である。
 役所は市民に情報を公開する、こういうときには市民に意見を提供してもらえる。市民は参画してください、ということを役所の義務として書き上げたものが自治基本条例であるが、これはマニフェストとは少し異なる切り口である。マニフェストは非常に素晴らしい首長がでてきて実行に移している段階であっても、首長が代わったら、反故にされる可能性がある。ところが基本条例というのはそういうことを制度化して条例にきちんと書いてあるので、新しい首長がきても守らないと行政訴訟の対象となる。そこが、大切なキーワードだと思う。

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