過去の活動

談論風発講座<前半>第1回講義を開催

開催日:2003年9月02日

テーマ:グループA 「特殊法人改革~国鉄改革の体験から~」
グループB 「日本の安全保障を考える
      ~関西経済同友会 安全保障委員会の活動現場より~」

講師:グループA 南谷 昌二郎 西日本旅客鉄道会長
グループB 岡野 幸義 ダイキン工業副社長

南谷昌二郎 講師講話

◆特殊法人改革の現状
 官から民へ、中央から地方へ、という流れの中で、これまでの日本の経済発展を支えてきた「大きな国家」をどう変えていくかが、高度経済成長の終わった今日の行財政改革の大きなテーマの一つになっている。国鉄改革は、これを実行できたお手本であり、かつてない行政改革であった。

 今の小泉内閣の特殊法人改革は、全体として一進一退という感じで、思い切った改革は本当に困らないと進まないのではないかと思う。

◆私が体験した国鉄改革
  国鉄再建監理委員長だった亀井正夫さんの「日本はいろんな改革をやったが、明治維新、戦後復興等、すべて外圧の下でやった。国鉄改革は初めて日本人の手で自らやった改革だ」との言葉に感銘を受けたが、そこに至るまでは大変なことだった。
 改革前の国鉄は、政府から数千億円の補助をもらっても年間1兆円の赤字であり、さらに37兆円の長期債務を抱えていた。それでも借金ができたから倒産しなかった。これが特殊法人の特殊法人たる所以である。鉄道事業は必要不可欠であり、いかに将来にわたって国民の役に立つ健全な経営を行うか、赤字、余剰人員、慣行といった不合理をどう処理するかが問題であった。

 国鉄自体も4回の再建計画を作成したが、計画自体が政治的産物であり、ことごとく破綻した。要員削減計画も民間と比べると生ぬるいと感じた。早く手をつければつけるほど良いし、いかに早く危機感を持って対処できるかということに尽きる。国鉄という入れ物を変えることがどうしても必要だった。とことん悪くなるところまでいったので、分割・民営化という改革ができた。改革後順調にいけたのも、そのおかげである。谷深ければ山高し、ということである。

 国鉄改革は、外から世論に押されたこと、国鉄内部の改革勢力が強まったこと、によるが、最後は中曽根首相の政治判断となった。最後に決定する国会も法律審議の時期に総選挙で自民党が圧勝した。最後は残り4ヶ月で間に合った。

◆分割・民営後の取り組み
 民営化以降は、年間平均6千億円の補助金をもらっていたのがなくなったことと、年間3千億円の税金を納めるようになったことで、年間8~9千億円国家財政に寄与している。民営化後16年間で国鉄の長期債務の国民負担分の大半になっている。一方、JRが承継した14.5兆円の債務も、今では本州3社で10兆円くらいになっている。

 分割後、JR各社は地域特性を反映した独自の設備投資判断を行っている。JR四国は瀬戸大橋開通にあわせて予讃線の一部区間を電化した。JR九州は特急の車両を一新、JR西日本は京阪神間の通勤電車の車両に新車を集中投入した。阪神・淡路大震災でもJRは2ヶ月半で復旧した。国鉄時代では予算措置・入札等の手続きが必要で、こうはいかなかったであろう。

◆特殊法人改革への示唆
 道路公団は資産規模に対して働く人の数が少なく、運送業よりは不動産業に近い。大勢の職員を抱えていた国鉄とは、改革のやり方も異なったものになるのではないか。

 国民は、膨大な借金を抱え、ヤミ勤務などの実態が報道されていた国鉄には愛想をつかしていたが、今の道路公団の問題点は見えていない。今のままでは、国民が現に困っているわけでもない道路公団の改革に向けた世論は形成されない。政治的に、まずこれ以上道路公団に新しい道路は造らせないと決め、それに合わせた財務諸表を作らせるとともに、それに相応しい人を総裁に据えて、国民世論に訴えるべきである。

 郵政民営化について言えば、今年発足した郵政公社をみていると、昭和24年に鉄道省から国鉄という公社に変わったのと同じだなという印象をもつ。今後、分割・民営化の検討を急ぐべきだと思う。

岡野幸義 講師講話

 関西経済同友会の安全保障問題への取り組みは、1978年の「国の安全に関する国民意識調査団」の西欧諸国への派遣が始まりで、現在も安全保障委員会という形で活動を続けています。

 国家が着実に成長・発展していくためには、経済と安全保障のバランスをきっちりとっていくことが必要不可欠です。
 そこで、関西経済同友会では、米国、韓国、沖縄という日本の安全保障にとってポイントとなる3つの国、地域を定期的に訪問し、政府要人、学者、経済人などといった方々と安全保障問題について議論を行っています。

 日本の今後の安全保障政策について、個人的な意見になりますが、今年6月の有事法制の成立は大きな前進ですが、日本には「日米同盟の高度化」「集団的自衛権の行使」「憲法(第9条)改正」の問題など、安全保障の体制整備に関し、まだまだやるべきことが残っています。

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